ブルンジでは、太鼓を叩くのに国の許可がいる。2017年10月20日の大統領令で、太鼓隊は文化省に登録することが義務づけられ、公式行事の外で演奏するには省の許可が必要になった。私的なイベントで叩いてもらいたい主催者は、1日あたりの料金を国庫に払う。公布時の報道では245ユーロ(約280ドル)、2022年の報道では250ドルと伝えられている。海外公演でも同じ日額が発生する。

無形の文化を「使用許諾のある資産」として、ここまではっきり運用している国は珍しい。鉱区や電波と同じ扱いだ。そしてこの実験は、効いた部分と壊れた部分が両方くっきり出ている。何かを守りたい人にとって、これほど読みやすい教材はそうない。

1. 太鼓はもともと音楽ではなく、統治の装置だった

こうなる理由は、この楽器の出自にある。ブルンジの聖なる太鼓「カリエンダ(karyenda)」は、王(ムワミ)と国そのものを表す最大の象徴で、半神的な地位にあった。王は太鼓の響きを国の決まりへと翻訳したとされる。戴冠、王の葬儀、婚礼といった大事は太鼓の音で告げられ、王が起きる時刻と休む時刻までが太鼓で知らされた。

そして、作る・叩く・運ぶ権利は、聖なる太鼓を守る家系「アバティンボ(abatimbo、強く叩く者たち)」が独占していた。近代的な知的財産の制度が来るずっと前から、世襲の実演許諾がここにあったわけだ。1962年の独立から1966年まで、太鼓は国旗と国章に描かれていた。共和制になると、公式の紋章からは外された。

聖所は今もギテガの北約7キロ、ギショラの丘にある。ギショラは2007年5月9日にユネスコ世界遺産の暫定リストへ登録された。そのギテガ自体が、1966年に王制が廃されるまで王の都だった街で、2019年1月16日の議会採決で政治首都に戻っている(経済と商業の中心はブジュンブラのまま)。国の重心が、太鼓の生まれた土地へ戻った形だ。

ここで押さえておきたいのは一点。太鼓の価値は「どれだけ鳴るか」ではなく、「どこで鳴らないか」で決まっていた。

2. 世界的な登録が、運用のルールを呼んだ

ユネスコは2014年、「王の太鼓の儀礼の舞」を人類の無形文化遺産の代表一覧表に登録した(整理番号00989)。登録の記述は驚くほど具体的だ。太鼓は常に奇数で、十数個を中央の太鼓を囲む半円に並べる。ある者は一定の拍を刻み続け、ある者は中央の太鼓に従う。叩き手は全国の聖所から集められ、その多くは聖所の守り手の子孫である。英雄詩と歌が伴う。

その3年後の政令で、国は3つのことを文章にした。誰が演じられるか、どこで現れてよいか、アクセスはいくらか。ブランドや作品を持つ人の多くが曖昧なまま運用しているこの3点を、ブルンジは条文にした。同じ政令は、女性が太鼓を叩くことを禁じ、太鼓に伴う民俗舞踊だけを認めている。

3. 効いたこと、壊れたこと

効いたのは、舞台の格だ。登録後は全州から叩き手が集まる全国大会が開かれるようになり、2021年12月には首都で決勝が行われた。家系による継承も生きている。ある楽団長は「父だけでなく、曽祖父たちもみな太鼓を叩いていた」と語る。

壊れたのは、日常の舞台だ。叩き手は今、政府の公式行事と、許可を買った人の結婚式でしか演奏しない。現地の奏者は「以前あった市場に大きな影響が出た」「需要が減った」と話している。1日250ドルという料金は、1人当たりGDPが世界で最も低い水準にある国では、個人の祝いごとから太鼓を事実上締め出す額だ。

型として取り出すとこうなる。希少性は文脈でつくるもので、価格で閉じると、次の世代が練習する場ごと消える。最上段の権威を守ることと、裾野の日常を閉じることは別の操作だ。後者は担い手の供給そのものを止めてしまう。女性を外した規定も構造は同じで、母数を自ら削っている。守りたいものの寿命は、ふだん誰がそれに触れているかで決まる。

4. 自分の手元で小さく試せること

  • 「出さない場所リスト」を3行書く。自分の商品・作品・技術を、どこに置かないかを先に決める。価値は露出量より、出さない場所で決まる。
  • 担い手を名指しする。アバティンボ方式。誰が代表して演じて/語って/売っていいのかを決めると、質のばらつきが一気に減る。
  • 上段は有料、日常段は開けておく。公式の最上位は値段と条件で守り、練習と裾野の段には料金の門を立てない。ブルンジの政令が落としたのはここだ。
  • 条件を公開文にする。政令の強さは、内容の是非とは別に「書かれている」ことにある。口約束だけの運用は、守る側も相手も毎回ゼロから交渉になる。

ブルンジの太鼓は、無形のものを資産として運用する実験が、設計次第でどちらにも転ぶことを一番はっきり見せてくれる事例だ。制度そのものを真似する必要はない。自分の持ち物について今日ひとつ、「ここには出さない」と決めて書き留めるところから試せる。

参考・出典