人口1,620人の島が、自国の1,200倍の海を「売らずに稼ぐ資産」に変えた。南太平洋の小国ニウエが設計した仕組みは、小さなプレイヤーが資源を守りながら収益を生む型として、そのまま使える。

ニウエがやったこと──EEZ全域を海洋公園にする

ニウエは2022年4月、自国のEEZ(排他的経済水域)全域をニウエ・ヌクトゥルエア多目的海洋公園として指定した。面積は約31万7,000 km²。国土260 km²の約1,200倍にあたる。

その中核が「モアナ・マフ(Moana Mahu)」と呼ばれるノーテイク海洋保護区で、EEZの40%、約12万7,000 km²を占める。ここでは漁業・海底採掘・石油探査がすべて禁止されている。

残りのエリアは段階的にゾーニングされている。

  • 沿岸3海里以内(約3%):村が管理する自給漁業エリア
  • 3〜24海里(約1%):地元商業利用ゾーン
  • 残り約56%:ライセンスを持つ外国漁船に開放する一般利用ゾーン

全面禁止ではなく、住民の食料安全保障と外貨収入を維持しながら、4割をフルプロテクトにかける。「守る」と「使う」を地図の上で明確に分けた設計だ。

1 km²=148ドル──海を小口販売する資金モデル

保護区を宣言しても、監視・取り締まり・調査の費用を賄えなければ絵に描いた餅になる。ニウエが2023年9月にニューヨークで発表した解決策が、Ocean Conservation Commitment(OCC)という仕組みだ。

1口US$148(NZ$250)で、モアナ・マフの1 km²を20年間保護・管理するコストをカバーする。12万7,000口を用意し、全口が埋まれば目標の基金US$1,800万ドルに届く。運用益で監視船の燃料、サンゴ礁モニタリング、子どもの海洋教育奨学金まで回す設計になっている。

面白いのは、ニウエ政府自身がまず約1,700口──住民1人につき1口──を購入したこと。「自分たちの海を、自分たちがまず買う」という姿勢を示してから、外部の企業・個人にスポンサーを募る順序にした。Blue Nature AllianceやConservation Internationalが初期パートナーとして参加している。

ベゾス・アース・ファンドの400万ドルが加速装置になった

2025年9月、ベゾス・アース・ファンドがニウエ・オーシャン・ワイド(NOW)トラストに対しUS$400万ドルの助成を発表した。内訳は、320万ドルが基金の積み増し、80万ドルが5年間の村議会の資源管理計画策定と政府機関の実務支援に充てられる。

これはベゾス・アース・ファンドによる太平洋12カ国・地域への総額US$3,750万ドルの助成「Unlocking Blue Pacific Prosperity」の一部だ。太平洋地域の海の100%を持続的に管理し、少なくとも30%を保護するという共通目標を掲げている。

ニウエのダルトン・タゲラギ首相は「食料安全保障、レジリエンス、そして住民にとっての新しい機会を強化する土台になる」とコメントしている。

この仕組みから持ち帰れる3つの型

1. 「守ること」自体をプロダクトにする

ニウエは海から魚を取って売るのではなく、海を守る行為そのものに値段をつけた。1 km²=148ドルという明快な単価設定が、支援者に「自分が何を買ったか」を具体的に伝える。寄付ではなくプロダクト購入の感覚に近い。小さな事業でも「やらないこと(=保全・制限)」に値付けできないか、と考えてみる価値がある。

2. 自分がまず顧客になる

政府が住民1人1口ぶんを先に購入したのは、単なるパフォーマンスではない。「売り手がまず買う」ことで、外部スポンサーに対する信頼のシグナルになる。クラウドファンディングでも、創業者自身が初期出資を入れるプロジェクトのほうが成功率が高いのと同じ構造だ。

3. ゾーニングで「全か無か」を避ける

EEZの100%を禁漁にすれば住民が困る。0%なら保全にならない。ニウエは40%をフルプロテクト、残りを段階的に開放するゾーニングで、食料・外貨・保全を同時に成立させた。何かを始めるとき「全部やるか、やらないか」で悩むより、地図を描いて領域を分けるほうが動き出せる。

参考・出典