トーゴのクロト(Kloto)地方の木彫り師たちには、「結婚の鎖」と呼ばれる代表作がある。二人の人物像が輪でつながっているのだが、その輪も人物も、たった一本の木材から彫り出されている。接着していない。組んでもいない。最初から一体なのだ。これが今日いちばん面白い発見で、そのまま使える設計思想でもある。

「継ぎ足せない」から、逆算がうまくなる

一本の木から鎖の輪を彫るには、削る順番が完全に決まっている。輪になる部分をどこに残すかを最初に決め、そこから外側を落としていくしかない。途中で「ここが足りなかった」と気づいても、木は生えてこない。つまりこの技法は、職人に「完成形を先に確定させる」ことを構造的に強制している。

クロトは手仕事の集積地でもある。この地方の工芸センターでは、昔の日常の情景を様式化して色で描く染め布(バティック)も作られている。さらに考古学の調査では、クロト地域から石囲いの遺構と製鉄の残滓が見つかっており、鉄の利用と地域的な生産ネットワークが古くから広がっていたことが示されている。数百年単位で「作る土地」だったところに、継ぎ目のない彫刻技法が残っている。偶然ではないだろう。

僕がここから持ち帰った型は単純だ。「継ぎ足し禁止」というルールを自分に課すと、設計の質が上がる。僕は新しい企画を作るとき、意図的に「一枚に収める」「一本のファイルで完結させる」「追記なしの一発で出す」という縛りを入れる。後から足せると思っていると、輪の位置を決めずに削り始めてしまうからだ。小さく試すなら、次に書くメモか提案を「追記禁止」で書いてみてほしい。書く前に考える量が明確に増える。

国名は、たった一つの町の名前から広がった

「トーゴ」という名は、エウェ語の to(水)と go(岸)から来ていて、「水のそば」「海の背後」を意味する。そして重要なのは、この名がもともと国名ではなく、トーゴという一つの町(現在のトーゴヴィル)だけを指していたことだ。1884年、ドイツはこのトーゴヴィルで国王ムラパ3世に文書へ署名させ、海岸沿いの一帯を保護領と主張し、内陸へ支配を広げていった。1905年にはドイツ領トーゴランドとなる。町の名が、後から国全体の名になったのである。

スケールする名前は、最初から壮大ではない。具体的で、場所が特定でき、意味が透けて見える。「水の岸」くらいの解像度でいい。僕は新しいプロジェクトに名前を付けるとき、抽象的な大概念より、実際に立った一つの場所や一つの現象の名前を選ぶようにしている。トーゴヴィル方式だ。

細長い国土を、一本の軸として読む

トーゴの形は独特だ。ギニア湾から北へ579km伸びるのに、最も広い地点でも幅160km。総面積は56,785平方キロメートル(クロアチアとほぼ同じ、カナダのノヴァスコシア州とほぼ同じ)で、人口は約800万人。海岸線はわずか56kmしかない。国土は主に二つのサバンナ平原が南西から北東に走る丘陵(シェーヌ・デュ・トーゴ)で隔てられ、最高峰はアグー山の986m。200以上の湖があり、最大はトーゴ湖だ。

この細長さは、輸出の動線としてそのまま機能してきた。ドイツ植民地期には、農産物輸出のために鉄道とロメ港が建設された。フランス委任統治の終わりまでに、学校網は主に海岸沿いと鉄道沿いに発達している。つまりこの国は、細い一本の軸に沿って動線・都市・学校が並ぶかたちで積み上がってきた。

そして現在、首都ロメには西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の開発基金が置かれ、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)に連なる西アフリカ開発銀行(BOAD)も本部を構えている。海岸線56kmの一点が、地域金融の結節点になっている。幅が狭いことは、軸が明確だということでもある。自分の事業や活動を「面」で広げようとして薄まっている人は、一度「南北579kmの一本線」として書き直してみるといい。どこに港を置くかが見えてくる。

最初の人々が山を選んだ、4つの理由

トーゴの初期の人口は、山地や河間地に結びついていることが多い。研究者が挙げるその立地の利点は具体的だ。涼しい気候、肥沃な土壌、病害を媒介する生物からの保護、そして奴隷狩りに対する戦略的防御。アタコラ山脈やカビエ高地は歴史的に「文化の避難所」として機能し、そのおかげで高地の共同体は祖先からの生活様式を例外的な度合いで保存した。人類学者ジャン=クロード・フロエリッヒは、これらの人々を「パレオニグリティック」と呼び、周辺の平原の集団に比べた古さと文化基層の均質性を指摘している。

面白いのは、選ばれた場所が「一つの利点が飛び抜けている場所」ではなく、複数の制約を同時に満たす場所だったという点だ。気候、土壌、健康、安全。どれか一つが欠ければ長期の定住にならない。僕がニッチや拠点を選ぶときのチェックリストはこれをそのまま借りている。「食えるか(土壌)」「続けられるか(気候)」「削られないか(防御)」「健康を損なわないか」。4つ全部に丸が付く場所だけを選ぶと、数は減るが、居られる年数が一桁変わる。

言語ポートフォリオを増やす、という一手

トーゴの公用語はフランス語で、国語はカビエ語とエウェ語。エウェ、ミナ、カビエを筆頭に37の民族集団の文化が重なっている。そのトーゴが2022年6月、コモンウェルスに加盟した。加盟に先立ち、外相ロベール・デュセイは、コモンウェルス加盟が新しい輸出市場、開発事業への資金、そしてトーゴ国民が英語を学ぶ機会をもたらすと期待していると語っている。

ここが実践的だ。既存のフランコフォニーの立場を降りたわけではない。トーゴは国連、アフリカ連合、ECOWAS、フランコフォニーの一員であり続けている。持っているネットワークを捨てずに、性質の違うネットワークを一つ足した。副業でも移住でもなく、単純にポートフォリオの追加だ。僕らのレベルでこれを試すなら、今の主戦場の言語を維持したまま、別の言語圏のコミュニティに一つだけ本気で参加する。翻訳ではなく、参加でいい。

原料の側から、完成品の側へ回る

トーゴ経済は自給的農業への依存が大きく、食用作物と換金作物の生産が労働力の大半を雇用し、GDPの約42%を占める。農場の平均規模は1〜3ヘクタール。2018年の生産はキャッサバ100万トン、トウモロコシ88.6万トン、ヤム85.8万トン、綿12.7万トン、カカオ4.1万トン、コーヒー2.1万トンなど。政府はトウモロコシ、キャッサバ、ヤム、ソルガム、シコクビエ、落花生で食料自給の目標を達成している。鉱業ではリン鉱石が最重要品目で、埋蔵量は推定6,000万トン。ただし生産は1997年の270万トンをピークに、2002年には約110万トンへ落ちた。アクセスしやすい鉱床の枯渇と新規投資資金の不足が理由の一部とされる。

その一方で、Choco Togo が国内初の bean-to-bar(豆から板チョコまで)のチョコレート製造者として登場している。カカオ4.1万トンを出す国で、豆のまま出すのではなく板にする側に回った例だ。自分が原料を提供している場所を一つ選び、そこで最終形まで作ってみる。これは誰でも今日から試せる。僕は自分が素材だけ渡していた仕事を一つ選んで、完成品まで自分で通すようにした。単価ではなく、学べる量が変わる。

基準を先に出す、という順番

最後にもう一つ、順番の話。Global Forest Watch の集計では、トーゴの2001〜2024年の累積樹冠喪失は82,074ヘクタール(2000年の樹冠面積の約14.9%)で、樹冠密度30%超の2000年時点の面積は551,477ヘクタールとされる。国は UNFCCC の REDD+ 枠組みに国家森林参照レベルを提出しており、2020年提出分は「評価済み」として掲載されている。一方、国家戦略、セーフガード情報、国家森林モニタリングシステムは「未報告」と記載されている。

戦略より先に、測る基準が出ている。この順番は、僕には合理的に見える。何を守るのかの数値がないまま戦略を書くと、達成したかどうかを永久に議論できてしまう。教育でも同じ構造が見える。トーゴの義務教育は6年で、初等教育の授業料は禁止され無償化が進んだ。Human Rights Measurement Initiative は、所得水準を踏まえたとき、トーゴが教育への権利について実現すべき水準の82.9%を満たし、初等教育で93.7%、中等教育で72.2%と分解して示している。北部では小学校教師の41%が保護者から報酬を受け取っており、所得が高いロメでは17%。分解された数字があるから、どこを直すべきかが一目で決まる。

持ち帰り方は明快だ。次に何かを始めるとき、計画書より先に「これで測る」という一枚を作る。基準が先にあると、戦略は後から一本の木から彫り出せる。トーゴの職人がやっているのと、同じ順番だ。

参考・出典