アラブ首長国連邦の政府職員は、いまこの瞬間、週4日しか働いていない。ドバイ政府が走らせている「Our Flexible Summer(フレキシブルな夏)」は2026年6月29日から9月10日まで。金曜を丸ごと休みにするか、金曜を4.5時間に短縮するか、職員は2つのモデルから選べる。
面白いのは週4日という結果ではなく、終了日が先に決まっていることだ。9月10日で終わる。だから「制度を恒久的に変えるか否か」という重い議論をしなくていい。夏のあいだ試して、数字を見て、来年また判断する。UAEはこのやり方で、働く時間の設計を国ぐるみで書き換えてきた。
2022年1月1日、国が週の形そのものを変えた
UAEは2021年12月、連邦政府職員の勤務を週4.5日にすると発表した。2022年1月1日から、月曜〜木曜は7時30分〜15時30分の8時間、金曜は7時30分〜12時の4.5時間だけ。週末は金曜午後・土曜・日曜になった。
これは単なる時短ではない。それまで湾岸諸国の週末は金曜・土曜が標準で、日曜は平日だった。UAEはそこから抜け、土日を週末にする世界の大半に合わせた。金曜が「働く日」になったのは、この国では初めてのことだ。
理由は明快で、経済的だった。UAE政府は、国際的な金融・貿易・経済のやり取りを滑らかにし、世界の動きに歩調を合わせて競争力を高めることを掲げた。土日が週末の国と取引するとき、週の重なりが4日しかない状態は単純に不利になる。労働時間を減らしながら、同時に世界と重なる日数を増やす——この2つを1つの決定で取りにいった。UAEはこのとき、5日という世界標準より短い勤務週を国として導入した最初の国だと自ら位置づけている。
ただし適用したのは連邦政府部門まで。民間企業は自分で決めてよい、とした。ここも設計として効いている。国が旗を立て、実例と数字を出し、民間は見て判断する。
同じ日、シャルジャはもう一歩踏み込んだ
同じ2022年1月1日、7首長国のひとつシャルジャは連邦とは違う設計を選んだ。週4日である。政府職員の勤務は月曜〜木曜の7時30分〜15時30分。金曜・土曜・日曜が3連休になった。
ここからが本題だ。シャルジャはやりっぱなしにせず、測って公表した。2022年8月9日のシャルジャ執行評議会で報告された調査によれば、2022年1〜3月の交通事故と死者は前年同期比で40%減った。通勤する人が減った分、一酸化炭素・二酸化硫黄・二酸化窒素の排出も下がったと報告されている。
この数字の何がいいかというと、オフィスの外で測られている点だ。「働きやすくなりましたか」という自己申告ではなく、交通や環境の統計に出てくる。週の設計を変えると道路の死者が減る、という筋道は事前には見えにくい。測る対象を社内満足度の外に置いたから拾えた発見だった。
1年後、2023年1月31日の同評議会では職員調査も報告された。仕事の満足度と業務パフォーマンスが90%向上、91%が「概して幸福」と回答、病欠は46%減少、メンタルヘルスと生活の両立への好影響は84%、96%が週の休みを楽しめるようになったと答えた。行政サービスの利用者側の満足度は94%だった。
ドバイは「季節限定」という三つ目の設計を採った
ドバイは連邦ともシャルジャとも違う道を選んだ。恒久導入ではなく、夏だけやる。
2024年、まず21の政府機関に絞って試した。結果は良好で、職員満足度は最大98%、ドバイ政府エクセレンス・プログラムの評価でも明確な改善が見られたと発表されている。そこで2025年は7月1日〜9月12日、対象をドバイ政府の全機関に広げた。
そして2026年6月29日〜9月10日、いま2年連続で全機関に展開している。選べるモデルは2つ。月〜木を8時間にして金曜を完全に休みにするか、月〜木を7時間にして金曜を4.5時間にするか。ドバイ政府人材局長のアブドラ・アリ・ビン・ザイード・アル・ファラシ氏は「職員の幸福と生活の質は、パフォーマンスを犠牲にして得られるものではない」と述べている。
21機関の試行 → 全機関へ拡大 → 翌年も継続。この順番が丁寧だ。いきなり全部を変えず、効くと分かってから広げている。
持ち帰れるのは「週4日」ではなく、この試し方だ
UAEの面白さは、同じ国の中で3つの異なる設計が同時に走っていることにある。連邦は週4.5日、シャルジャは週4日、ドバイは夏だけ週4日。1つの正解に賭けず、複数の型を並走させて比べられる状態を作った。ここから取り出せる型は4つある。
- 先に終了日を決める。「9月10日まで」と切ってあるから始められる。恒久変更の議論は重いが、期限つきの試行は軽い。個人でも「この10週間だけ」と切れば同じ効果が出る。
- 一部から始めて、効いてから広げる。ドバイは21機関→全機関の順で動いた。最初から全体に賭けない。
- 選択肢を1つでなく2つ用意する。ドバイは金曜完全休みと金曜半日の2モデルを併存させた。現場が自分に合うほうを選べると、制度への抵抗が小さくなる。
- 自分の気分の外にある数字を1つ測る。シャルジャの発見が鋭かったのは交通事故という外部統計を見たからだ。自己申告だけ見ていたら出てこない。
最後の点は、公表された数字の読み方にもそのまま返ってくる。90%や98%という数値は、その施策を実施した政府自身の調査・アンケートにもとづくものだ。方向性としては参考になるが、独立した第三者による検証ではない。だから僕は、同じ資料の中でも交通事故40%減のほうを重く見る。自己申告と外部統計が両方あるとき、後者のほうが多くを語る。
自分の働き方を変えるときも同じことをやればいい。期限を切り、一部から試し、型を2つ用意し、気分以外の数字を1つ決めて測る。それだけで、思いつきは実験になる。UAEが国の規模でやっていることの中身は、結局そこだ。
参考・出典
- Al Jazeera: UAE announces 4.5-day workweek, Saturday-Sunday weekend
- Khaleej Times: 3-day weekend in Sharjah — workweek timings announced
- The National: Sharjah's four-day work week leads to big cut in road-related accidents and deaths
- Expat Media: Sharjah reviews 4-day work week, sees 90% increase in productivity
- Dubai Media Office: DGHR to implement 'Our Flexible Summer' Initiative 2025 across all Dubai Government entities
- The National: Dubai announces four-day working week for government staff over summer (2026)